Il quaderno d'Estate Ⅱ

Biglobeウェブリブログから移行してきました。

ファントムの闇 クリスティーヌの光

やっとブログを書く時間を持てました!

スケート・アメリカから3週間、デニス・テン・メモリアルから2週間。ファントムとクリスティーヌの紡ぎだす光と影のドラマに魅せられて、もう早くこの想いを拙くても文章に残しておきてたまらなかったのです。

 

2006年11月末。たまたまテレビで目にしたNHK杯の男子FSの中継で「オペラ座の怪人」を見て、高橋大輔の応援を始めるようになって16年。飽きっぽい私がこんなに長い間、ファンを続けているのは、あまりに大ちゃんのスケート人生が山あり谷ありで、目を離せないというか見放せなくなってしまったから…なーんてことも考えたりしてましたが、まさかこんなに時間が経ってから、今まで以上に心奪われるパフォーマンスを繰り出されるとは…惰性でファンをやっていたわけではないけれども、シングルスケーターとしての全盛期ははるか前に過ぎて、アスリートとしては限界と思われる年齢にとっくに達したという今になって、こうも人の心を揺り動かすパフォーマンスを繰り出すとは、望外の喜びとしか言いようがありません。

 

しかもファンになったきっかけの「オペラ座の怪人」再びとは、勝手に縁を感じて感動している私です。

思えばニコライ・モロゾフ振付の2006/2007シーズンの「オペラ座の怪人」はミュージカルの数々の名曲をつないで、当時の高橋大輔の若い力を引き出していました。「つぎはぎ」というと聞こえはよくありませんが、しかしモロゾフはとても上手く曲をつないでいました。「オペラ座の怪人」は今まで数えきれないほどの選手たちのプログラムとして使用されてきましたが、中には酷いつぎはぎのものもありましたからね。そこはさすがモロゾフでした。

今回のかなだいの「オペラ座の怪人」はPhantagiaとThe music of the nightの2曲だけ。しかもこの2曲は物語の中で繋がっている。天使のようなクリスティーヌを、ファントムが「音楽」を介して闇に生きる自分の世界に導き入れようとする場面に絞っています。

 

配信動画でズエワ先生が「シングルの時の大輔はファントムを滑って空想の中で理想の女性を創り上げた」「今その女性が現実となって表れた。それが哉中」「ファントムがクリスティーヌをデイーヴァにする」という意味のことを仰っていた、まさにその物語がスケートになっていました。

 

我々日本のファンばかりかスケアメの会場のアメリカのスケートファンもこのプログラムに熱狂していましたが、良くも悪くも「芸術」よりのパフォーマンス。それがフィギュアスケートという競技の特殊性でもあるのでしょうが、かなだいのパフォーマンスは特にその特徴が顕著です。もともと大ちゃんは若い頃から「表現者」であり続けていますが、今回大ちゃんだけでなく哉中ちゃんも「氷艶」シリーズを経験していたことが大きいのではないのでしょうか。

演技開始時の哉中ちゃんの不安そうな表情は、怪人に囚われたクリスティーヌそのもの。二人のディープエッジによる滑り、表情、所作すべてがファントムとクリスティーヌの物語を紡いでいました。

 

使われた音源は、映画版のサントラ…実は私は映画版のファントム、ジェラルド・バトラーの歌が苦手でした。なんでも本人は敢えて「ロックっぽく」歌ったとのことですが、私が初めて聴いたファントムが一流中の一流のテノール歌手ホセ・カレーラスの「ロイド=ウェッバーを歌う」というCDだったせいもあってか、バトラーの声に違和感があった上に、テレビで見た映画版があんまり良くなかった…って地上波のCMあり台詞吹き替えで見たのだから、これも判断保留ですかね。

とにかくかなだいのプログラムでのバトラーのThe music of the nightの良さに気が付くことができました。少なくともあのプログラムにはバトラーの声で正解なのではないでしょうか。

あと映画見た時に仮面に隠れていない部分のバトラーファントムがイケメンすぎることも気になりましてw 当時バトラーファントムのファンの方が「ファントムはイケメンでないと」と言っていたのも「どうよ?」と思っていたのですが、その見解は正しかったと納得いたしました。

それは大輔ファントムだけでなく、かなだいがきっかけとなってYou tubeで検索して出てきたロンドン上演25年記念でファントムを歌ったラミン・カリムルーの若々しく力強いファントムを見ても、思ったことです。醜い風貌の下の一番芯の部分でファントムはイケメンなのだと。

そして見るたびに美しさを増していく哉中ちゃんは今まさにクリスティーヌとともに歌姫(ディーヴァ)になりつつあるのだと思います。

 

もうね書きたいことは尽きないのですが、あと一週間でNHK杯。この目であのファントムとクリスティーヌを見ることができるはずなので、その時までまだまだ取っておきます。

初戦のスケアメで取りこぼしがあり、思ったほど点が伸びなかったという大きな課題ーわずか一週間後のカザフスタンで早くも修正してきましたがーをどこまで克服して仕上げてきているか。楽しみでもあり心配でもあるのは、この16年変わりません。

 

舞台のクリスティーヌと同じように白いドレスの哉中クリスティーヌ。そんな光そのもののクリスティーヌを渇望し闇の中で苦悩する大輔ファントム。早く二人の光と影のドラマをこの目で見たい。

2007年東京体育館、世界選手権の会場で21歳の大輔ファントムを目の当たりにして、そして今、クリスティーヌを得た36才の大輔ファントムを見る機会が巡ってくるとはなんと幸せなことか。

 

コロナ第8波が迫りつつあり、特に先行するように感染者が増えている北海道に行くにあたり、感染対策には万全を期すように努めます。